最初に家を立てた時、トラメル世界はまだなかった。
モンデイン水晶の欠片にYamatoが発見された時、喜び勇んで移住し、
一生懸命掘って木こって皮を集めて革ブラ作っては売って、ようやく一軒家を手に入れた。
懐かしい記憶だ。
場所はブリテインの北。
Windの門の北側に見える海沿いだった。
山も近く海も森も近い。
生産にはピッタリな場所だった。
今はもう無いあの家の場所に、誰かが越して来たらしいと聞いて見に行くつもりでフェルッカに降り立った。
すると、なんてことだろう!
ブリテインの街に入るとすぐに話しかけてくる人がいた。
ちょっとそこの人!
良い儲け話があるんだけど、聞きたくないかい?
・・・ちょっとビビった。
なにせココはフェルッカ。
そう、他人との関わりはココでは死を意味することも少なくない。
まあ、ビビった事を隠す為にも話を聞いてやろう。
平然と。
何事もなかったように。
こんにちは、私を目的地まで案内してくれる護衛の方を探しています。
よろしければ引き受けてくださいませんか。
もちろん、お礼はさし上げますよ。
ああ、そうだろうとも。
で、ドコにいきたいんだい?送ろう?いやそうじゃ。。。
あ、なんて懐かしい。忘れていたよ。
そう、彼の目的地はオクロー。
シャード最初期には虹布だか星布だかバースレアが取れるという噂がある街。
いろいろお店も揃っていて実に便利な街だった。
一時はベースとしてそこで活動していた事もあったなぁ。
なにせ、船か魔法でしか渡れない島にある街で、適度に不便なゆえそこの店主はいつも仕入れに苦労していたんですわ。
だからブリテインとかでは買って貰えない初心者な私の生産物がよく売れたわけですよ♪
いいでしょう。行きましょう。
懐かしきオクローへ。
鍛冶屋の親父は元気かねぇ。
ブリテイン郊外のムーンゲートに向かう道すがら、思い出話に花を咲かせ、実に楽しい道中だった。
依頼者はなんでトラメルに向かう私を不審がったが、
トラメルのスカラブレイ郊外に構えた我が家には2Fに幾らか各地へのルーンブックが開放されている。
中にフェルッカ街が在るわけ、と説明すると大人しくついてきてくれた。
果たして、誇りをかぶったルーンブックからオクローへのゲートを開く。
見慣れたゲートと違い赤く輝くそれは、なかなか禍々しいものを感じさせるが、
行き先がフェルッカである事を知らせる宮廷魔術師たちの涙ぐましい努力でなされた注意喚起の色だ。
おそらくフェルッカで生まれ育った彼には見慣れた色なのだろう。
特に何も言わずついて来てくれた。
ゲートを出た先は懐かしきオクローの民家-やっぱりまだ空き家のようだが-だった。
そうそう、ここならゲートを開くにもリコールするにも邪魔は入りにくいんだった。
その家がオクローの民家であることを彼は知っていたのか、
クエストを達成しました。
報酬を受け取ってください。
そう言ってお礼をくれた。
いやいや、こちらこそ懐かしいオクローに来れて、なんか嬉しいですよ。
そう言おうと思ったが、彼はサッサと外に出て行ってしまった。
急いでいたのかな?
まあ良い。
久しぶりに鍛冶屋の親父の顔を見ていくか。
なんか忘れているような気がするけれど、なにか満たされた気分だ。
人の役に立つのはとても気分がいい。
慈悲の心が良い方向に刺激されるのを感じながら、鍛冶屋への道を急いでいた・・・