力を貸してくれないかな。
なんとなく疲れた感じで頼みごとをしてくるエルフがいた。
[依頼]
もうダメだ、私にはできない。
この地域の植物を食い荒らされないように、冬には飢えないように、牝鹿[hind]の数を減らすのが私の仕事だし、肉食動物を絶滅させてしまった当然の報いとして、誰かがやらなくちゃならないのは判ってる。
だけど、あんなにきれいで無垢な動物はいないよ。
私にはできない。
この仕事、代わりにお願いできないだろうか?
僕だって嫌だ。
鹿せんべいをあげるとお辞儀するような可愛い子たちだ。
何を好き好んで・・・
そうかい。
でも、何かの拍子で気が変わったら、いつでも来てくれよな。
・・・本当に憔悴しきっている感じだ。
解らないでもない。
このまま放置しておけば、森は枯れ、山は荒れるだろう。
自然を侮り、傲慢にも世の理りを踏みにじった結果だ。
確かに狼は家畜を荒らす。
猪は畑を荒らす。
だが、一方的に害獣と決め付け駆逐して良い訳ではない。
人は同じ事をアチラコチラで繰り返す。
狼を狩って絶やしたら鹿が増えて山が荒れる。
猪を狩って絶やしたら猿が増えて森が荒れた。
大間抜けなのは、雀を害鳥と称し絶やしたら虫に田畑を荒らされたってアレだ。
鴨を飼えば少しはよかったろうにとも思うし、なにより誰か個人が絶対に正しく間違えないなんてことはありえない。
宗教に無思慮でハマるマヌケはいつでも何処にでもいるのだけれど。
ってそんな事はどうでもいい。
誰かがやらなければならない。
他人に手を汚させて、自らの清浄を誇ることはできない。
それを忘れず、自らを戒めるものを政治家と言い、
忘れ去るどころか、知らぬ存ぜぬ私は悪くなく周りが悪いと厚顔にものを言うものを政治屋と言い、個人をさしてルーピーと言うw
意を決し、無垢なモノどもを自身の都合が故に狩りにたつ・・・
紅く染まった刃が、揺れる視界の中にある。
泣いてなどいない。
泣くことなど許されない。
コレは罪だ。
許されざる罪だ。
憐憫を誘うことなどしてはいけない。
ルーピーはルーピーである。
自分の無知無能無策が混迷を呼んだと評されるなら、その呼び名を甘受する必要があるだろう。
デモクラティックパーティ?Noである。ポピュリズミックパーティとでも呼ばれてしかるべきだ。
いや今は関係ない。
深き罪の自覚に多少混乱があるようだ・・・
黙って渡してくれた報酬が、イヤに重く感じる・・・
エルフのもとに帰ると、すべてを解っているのだろう。
何も言わず、報酬を渡してくれた・・・