街の銀行で用を済ませ、さあ帰ろうかと踵を返すと、後ろに立っていた人にぶつかりそうになった。
幸いぶつかりこそしなかったが、相手の顔まで10cmな危機だった。
これが見目麗しいご婦人であれば幸運というものだが、なにか薄汚れた黄色い人型・・・?
とか考えてると、いきなり叫びだした。
ちょっとそこの人!
良い儲け話があるんだけど、聞きたくないかい?
とか言っていたかな。
まあ、まてまて、近い。
とりあえず離れよう。
で、なんだって?
こんにちは、私を目的地まで案内してくれる護衛の方を探しています。
よろしければ引き受けてくださいませんか。
もちろん、お礼はさし上げますよ。
体を上下に揺さぶり、甲高い声でスッゲー早口でまくし立てる。
よく聞き取れなかったが、そんな感じのことを言っていた。
なにか相当焦っている感じだ。
聞けば、スカラブレイで待ち合わせをしているのだが、道が解らない魔法も使えない、ルーンはもちろん無い、その上ここが何処だかすらわからない・・・
どうやってココに来たんたんだろう?とは思ったが、勝手に喋ってくれた。
なんでも、別の人にスカラブレイまでの護衛を頼んだらココへのゲートを開いてくれたので、そのゲートを潜ったら、相手は来ないままゲートが閉じてしまったのだとか。
・・・何というか、何と言えば良いのか。
報酬が前払いだったということもなく、つまりは被害があったというわけでもなく、ただココに飛ばされただけなわけだ。
説明しながら、ゲートを開いた人の悪口をチョクチョク挟みつつまくし立てる。
上下に体を揺さぶり、時々飛び蹴りを食らわせるようなジェスチャーを挟むとか実に挙動不審だ。
まあ、落ち着け。
そう悪口を言うもんじゃない。何か事情があったかもしれないじゃないか。
そうなだめつつ、幸い私もスカラブレイに帰るところだと告げる。
言いつつゲートを開く、なんて器用なことをしてみせると、間髪入れず飛び込んできた。
そんなことだから、おかしな事になるんじゃね?もそっと考えようよ。
追ってゲートをくぐると、、、
クエストを達成しました。
報酬を受け取ってください。
そんな感じのことを言ってお金の入った袋を渡すと、カウンセラーホールの向こうに走っていった。
なんであんなに急いでいるんだろう?
まあ、私がいい人だから良かったものの、ダンジョン最下層へゲートを開く人もいるから、知らないゲートには入ってはいけない。
そうアレだ。知らないメールを開いてはいけないってヤツだ。
スカラブレイ郊外にある我が家に向かって歩き出した。
途中、渡し船で一緒になった人が、一つ妙なことを言っていた。
間違って開いたゲート飛び込んだ、話を聞かないナシの妖精が居たとか何とか
怪しいので放っておいたとか。
そういえば、さっきの挙動不審な薄汚れた黄色いやつ。
語尾に「ッシー」とかつけて話す怪しい奴だったなぁ。
似たような話はよくあるもんだ。
どんな人でも慈悲の心を以って接すれば、きっと公認されるだろうさ。
私も一つレベルが上ったような気がする。